ビジネスEQ〜感情コンピテンスを仕事に生かす/ダニエル・ゴールマン

これまでのビジネスの世界では、IQが高いということが企業の業績に貢献する条件であると考えられてきた。しかし実際は、社員が好業績を収めてビジネスで成功することとIQの高さには相関性が低く、単なる必要条件でしかない。本書では、卓越した業績を達成するためには高いEQ(感情知能指数)に基づいた豊かな感情コンピテンスが必要であり、またそれは学習によって修得出来るものであることを、多彩な事例を元に明らかにする。

感情コンピテンスの構造
個人的コンピテンス
◇自己認識
感情の理解、正確な自己評価、自己確信
◇自己統制
自己コントロール、信頼性、誠実性、適応性、イノベーション
◇モチベーション
達成意欲、コミットメント、率先行動、楽観的見方
社会的コンピテンス
◇共感性
ほかの人を理解する、ほかの人を育てる、サービス重視、多様性を活かす、政治の理解
◇社会的スキル
影響を及ぼす、コミュニケーション、対立マネージメント、リーダーシップ、変革の触媒者、連帯を築く、強調と協力、チーム能力


【評価】
★★☆☆☆

【感想】
前作「EQ−こころの知能指数」で、IQに代わるEQ(感情知能指数)という概念を提唱し、EQが社会生活に及ぼす影響が示された。それが読者の共感を呼び、一般用語として「EQ」という言葉が市民権を得るまでに至っている。本書は、筆者がEQをビジネスの世界に適用することの妥当性を検証したものである。

ビジネススキルの一つとしてEQは注目されているが、EQを客観的な指数として算出・評価するまでに至っておらず、実際のビジネスシーンで応用する(人事評価や開発、採用に使用する等)には時期尚早であるが、その方向性は示唆に富むものである。

本書では様々な事例を持ち出し、その妥当性を明らかにしようとしているものの、逆に体系的な説明が乏しく起承転結もない構成となり、退屈感を感じて最後まで読破出来なかった。それで、残念ながら評価は★二つ。心理学の側面からの切り口もあると面白かったかも。

【お気に入り】
われわれのせわしない生活のペースでは、感情に場所も時間も与えないので、感情は地下に潜行せざるを得ないのだ。これらの精神的プレッシャーが集積されて、つぶやきのような内からの声を発する。実はこの声がわれわれの人生の道案内としてわれわれが活用できる、説得力を伴う内なる舵をわれわれに提供してくれるのだが。(p.90)

【目次】
第1部 専門能力を超えるEQ
第1章 新しい基準が必要
第2章 感情コンピテンスが業績を左右する
第3章 ソフト・スキルはこれだけ重要
第2部 EQを自己把握する
第4章 心の方向舵
第5章 自己コントロール
第6章 何がわれわれを仕事に駆り立てるか
第3部 ピープル・スキル
第7章 社会にレーダーを向ける
第8章 影響力を効果的に発揮する
第9章 チームワークを活かすEQ
第4部 EQ修得のための新しいモデル
第10章 感情コンピテンスの向上は可能だ
第11章 ベスト・プラクティス
第5部 高いEQを備えた組織
第12章 組織の業績を高めるEQ