第149回テーマ:水素製造技術

1.さまざまな水素製造技術

令和5年(2023年)改訂の「水素基本戦略」では、供給拡大のため、国内水素製造基盤の確立と、海外製造水素の活用を同時に進めていくことが重要とされた。この水素には様々な製造法式がある。

現在、水素は主に、製鉄所やソーダ工業の副生ガス、天然ガス・ナフサの改質により製造されている。この他にも、水の電気分解により水素を製造する電解法や、水の熱分解法、光触媒による水分解法、特殊なバクテリア代謝や発酵、光合成により水素を発生するバイオプロセスがある。

2.化石燃料改質法による水素製造

水蒸気改質法は、現在主流となっている。天然ガスのメタンを原料にする方法は水蒸気メタン改質(Steam Methan Reforming , SMR)と呼ばれる。製造された水素は、圧力変動吸着法(Pressure Swing Adsorption, PSA)によりガス分離され、純度が高められる。

3.電解法による水素製造

電解法には、アルカリ水電解法、固体高分子形(Proton Exchanage Membrane, PEM)水電解法、固体酸化物形水電解セル(Solid Oxide Electrolyser Cell, SOEC)、アニオン交換膜(Anion Exchange Membrane, AEM)水電解法などがある。アルカリ水電解法と固体高分子形水電解法は、すでに商品化されているが、SOECは実証試験レベルにあり、AEMは技術開発段階である。

4.バイオマスからの水素製造

バイオマスは、化石燃料を除いた動植物に由来する生物資源である。木質系や農業残渣系資源、下水汚泥等は空気を遮断し加熱する乾留により熱分解し、生成された可燃性ガスから水素を精製することができる。

5.エネルギー減により水素の分類

製造時の原料やCO2排出量に着目し、石炭や天然ガスなどの化石燃料から作られた水素を「グレー水素」、化石燃料から製造される際にCO2を回収した水素を「ブルー水素」、再生可能エネルギーで発電された電気で製造された水素を「グリーン水素」と呼ぶことがある。