需給ひっ迫警報2時間遅れ

経産省有識者会合で検証

 

東京電力管内で2022年3月22日に起こった電力需給逼迫について、原則として前日午後6時までに発出する電力需給逼迫警報が2時間遅れ、自治体や企業に節電の協力を得にくくなり、事態が悪化した。

前日の午後8時に節電要請されても企業は対応できない。今回、警報発出の判断や情報提供についての課題が明らかになり、今後経産省が検証を進めていく。

上記を受けて、教訓として下記を真剣に議論しなければならない。

1.上記に至ったプロセスの再検証

3月16日福岡県沖の地震の影響により、東北、東京エリアの火力発電6基334.7万kWが一部停止している中で、3連休明けに東日本で気温が低く悪天候が予想されたため、特に東京電力管区内で電力需給が極めて厳しく見込みとなった。

各電力会社へは①火力発電所の増出力運転や自家発の稼働要請、②広域的な電力の融通、など最大限の対策を要請するも、十分な電力供給力の確保が困難になることが見込まれたことから、③家庭や職場において不要な照明を消し、暖房温度の設定を20度とするなど、日常生活に支障のない範囲で節電を協力するに至った。

2.警報発出の判断の遅れ

迅速で精度の高い需給予測の方法を確立し、それをタイムリーに発出する仕組みと共に、国と企業(供給側と需要側の両方)との間の信頼関係の構築が急務。

節電を要請するからには、個人や企業に社会的責任の意義を含めてどれだけ納得感を持って頂けるか、国がどれだけ強制力を持って実行できるか、その法的な根拠は何か。

「日常生活に支障ない範囲」と民間に寄り添いつつも、実行を強要するのはおかしい。計画停電と需給ひっ迫警報は何が違うのかを官民の壁を越えて検証しなければならない。

3.供給力の確保

①火力発電・揚水発電の活用、②連系線の増強による地域間の融通やデマンドレスポンスの活用推進、③再エネ発電事業者に電力需給を意識させた取組み促進、④電力貯蔵技術(水素、蓄電池等)のコスト低減や社会実装に向けたイノベーション、⑤需要家側の経済的代理制御、などで供給力を確保する。

 

出典:日経新聞3月26日(土)朝刊より著者加筆