上司の哲学−部下に信頼される20の要諦/江口克彦

PHP研究所の副社長である著者が、カリスマ経営者であった松下幸之助晩年にその傍で仕事をし、日々の交流を通じた中で感じ、心の奥に落とし込まれ、自身も経営者として実践されている部下への係わり方を、松下幸之助とのエピソードを交えてながら解き明かす。

【評価】
★★☆☆☆

【感想】
「人間」松下幸之助の、部下を信頼し、尊重し、感謝し、気付きの中で育て、フォローして夢へと導く哲学が語られている。上司と部下とを主従の関係と見ず、「人を大切にする」ことから発する一経営者の哲学が、一貫していて心地よい。

ただし、どうしても高度経済成長期の「古めかしさ」が感じられてしまう。今や部下とのジェネレーションギャップは“情が通じない”レベルにまで達しており、極端な例として外国人が部下になったら…とイメージすると???と思う。この本で述べられているのは、必要条件かもしれないが十分ではないだろう(と思うのは、自分が社会人としてまだ若い(三十代前半)から?)。

【お気に入り】
ある時、新聞記者に経営者の条件は如何かと問われて、松下はニッコリと笑って次のように答えたものだ。
「経営者の条件は唯一つ、自分より優れた人を使うことができること。これだけで十分ですわ」(p.106)

【目次】
序 仕事の峠・人生の峠
第一則 夢を与える
第二則 考え方を示す
第三則 ほめる
第四則 熱意を評価する
第五則 能力を引き出す
第六則 耳を傾ける
第七則 仕事を任せる
第八則 差別をしない
第九則 自分より優秀な人材を育てる
第十則 叱った後のフォローをする
第十一則 雑談を大事にする
第十二則 率先垂範する
第十三則 秘密をつくらない
第十四則 声をかける
第十五則 部下を見て話をする
第十六則 「なぜ」を説明する
第十七則 訴える
第十八則 部下に感謝の念をもつ
第十九則 女性の部下を意識しない
第二十則 運をつかむ
結び 人間的成長こそ