餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?/林 總

アパレル会社社長であった父親の急死により社長に就任した娘の由紀は、メインバンクから一年の猶予のうちに経営立て直ししなければ融資打ち切りすると言い渡される。そこで、藁をも掴む思いで、同じマンションに住む大学院教授の安曇に経営再建へのコンサルタントを依頼した。

ストーリーは、由紀と安曇が食事をしながらの対話形式で進められる。会計の知識を駆使して経営状況を「見える化」してPDCAサイクルで改善し、由紀は見事経営再建をやり遂げる。

【評価】
★★☆☆☆

【感想】
物語り式に書かれている自己啓発書や経営書が最近多いが、これもその流れに乗ったものである。会計本でありながら、どのチャートにも具体的な数字を一切使わずに説明しており、その部分の試みは評価出来る。

のっけから会計を「だまし絵、隠し絵」と言い切る逆説的(自虐的?)な「つかみ」、逆粉飾により社長辞任を部下から迫られる「山場」など構成の工夫もあるが、初心者が対象だからかページ数の都合からか、起承転結のメリハリもなく、「自分でも会社で実践してみよう」と思うワクワク感も、「お金のにおい」もない味気ない内容だった。また、題名にしても「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」ほどナルホド感もなく期待外れだった。

【お気に入り】
ハッキリといいます。会計は「会社の実態を正確に映し出す鏡」ではありません。会計は遊園地のマジックミラーのように、実際の姿よりも痩せて見えたり、太って見えたりするものなのです。(p.2)

【目次】
プロローグ 突然の社長就任
第1章 会計はだまし絵、隠し絵だ−会計の本質と損益計算書のしくみ
第2章 現金製造機の効率を上げよ−バランスシートを理解する
第3章 大トロはなぜ儲からないのか?−キャッシュフロー経営とは何か
第4章 テストの見直しをしない子は成績が悪い−経営計画と月次決算のPDCAサイクル
第5章 餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?−利益構造と損益分岐点解析
第6章 シャネルはなぜ高い?−見えない現金製造機とコーポレーションブランド経営
第7章 整形美人にご用心−粉飾決算の見破り方
第8章 殺風景な工場ほど儲かっている−原価管理と活動基準原価計算
第9章 決断 進むか、退くか−機会損失と意思決定
第10章 シャーロック・ホームズの目と行動力を持て!−異常点に着眼し、原因を究明する
第11章 会計のトリックに騙されるな−逆粉飾を見破る
エピローグ 夢に向かって