【技術士】過去問チャレンジ(H30機械-動力エネルギーⅡ-2-2)
再生可能エネルギーの利用拡大が注目を集める中、バイオマスや風力等、数々の再生可能エネルギー発電設備の導入が検討されている。あなたは風力発電事業の検討を行る技術責任者に任命されたとして、以下の問いに答えよ。
(1)導入検討の際に調査すべき内容について述べよ。
(2)風力発電の仕組みと設備の概要について述べよ。
(3)風力発電設備導入の際に考慮しなければならない社会条件について述べよ。
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【検討事項】
1.立地計画の立案
◇風況
⇒年間を通じて毎秒6m以上の安定した風が吹く
⇒発電可能な電気容量を把握する
◇広い土地がある
⇒土地開発の許認可として農地転用・林地開発・農振除外等を取る
⇒そのために土地の権利関係・地権者、地目をチェックする
◇風車の搬入路が確保できる
⇒荷揚げ港から幅員5m以上の道路を確保する
◇送電線が近くにある、送電線の容量に余裕がある
◇周りの環境に影響を及ぼさない
⇒騒音(風切り音)のため周辺の住宅地からの距離を確保する
⇒希少動植物
◇自然災害(台風、雷)
2.風力発電の仕組み
◇ブレード、タワー、ナセル、増速機、発電機、ブレーキ装置、
可変ピッチ機構、方位制御機構(ヨー制御)
3.発展キーワード
◇洋上風力発電
◇コネクト・マネージ
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【章立て】
1.風力発電の導入検討の際に調査すべき内容
(1)立地に関する調査
(2)希少条件の調査
(3)送電網の状況調査
2.風力発電の仕組みと設備の概要
(1)風力発電の仕組み
(2)プロペラ形風車発電設備の概要
3.設備導入時に考慮しなければならない社会条件
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【解答案】
1.風力発電の導入検討の際に調査すべき内容
(1)立地に関する調査
風力発電を計画する場合には、立地条件の検討が必要である。風力発電の好適地には、一定以上の風速の風が安定して吹く場所である。それを確認するためには、最低でも1年間の風速・風光調査が必要となる。また、風車からは騒音が発生するために、周辺の住宅地からの距離を考慮しなければならない。また、風車が林立すると景観に悪影響となるため国立公園等の地域においては、景観への配慮を行う必要がある。さらに、渡り鳥などの通貨地域がある場合には、鳥類などへの影響もあるため、生物調査も必要となる。
(2)希少条件の調査
風力発電設備は、自然災害の影響を受ける場合が多くあるため、立地を検討している場所の自然条件の調査が必要となる。特に大きな影響を与える災害として、台風など強風時の被害が挙げられる。また翼の先端は回転時に高い位置に達するため、雷害被害をうけやすい。特に日本海側の冬季雷による被害は大きいので、特に注意する必要がある。
(3)送電網の状況調査
大規模な風力発電の場合は、都市部から離れた場所に計画されることが多いので、発電した電力を需要地まで送る送電線の容量に余裕がある必要がある。そのため、既設の送電線の状況を調査する必要がある。
2.風力発電の仕組みと設備の概要
(1)風力発電の仕組み
事業として風力発電を行う場合には、3枚翼プロペラ形風車が用いられる。プロペラ形風車の発電量は、直径の2乗、風速の3乗に比例するが、風速が一定値を超えた場合には、発電機が過負荷にならないように風車出力を制御する。
(2)プロペラ形風車発電設備の概要
プロペラ形風車は、翼、ロータヘッド、主軸、ナセル、タワーおよび基礎から構成される。発電された電力は、既存の電力系統に連系するため、周波数調整など変電設備が設けられる。
3.設備導入時に考慮しなければならない社会条件
風力発電設備は発電量の変動が大きいために、都市部で電力需要の多い地域の場合には、他の発電設備との協調により、総合的な安定化が図られる。しかし、そうでない地域においては、電力の変動を抑えるための蓄電設備などの併設が必要となる。また、我が国では陸上風力発電設備を計画できる場所が少ないので、海上風力発電の検討も必要となるが、我が国の周辺海峡は遠浅のところが少ないため、浮体式の発電設備の検討も必要となる。なお、地球環境問題および地政学的リスクを受けないエネルギーの活用は、今後、より活発になると考えられるので、新たな技術や仕組みの開発は欠かせないと考える。