【出典】朝日新聞 2021年4月28日夕刊

地域間送電容量2倍へ最大4.8兆円

 国の認可法人「電力広域的運営推進機関」は28日、地域間で電力をやりとりする送電網の強化について検討会を開いた。送電線の容量を現在の約2倍に増やすため、投資が必要との試算を示した。再生可能エネルギーの普及を加速させる狙いがある。

 具体的な工事計画をつくるのに時間がかかるため、送電網の整備が始まるのは早くても2022年度以降だ。運用開始は30年代になりそうだ。

 計画をもとに送電線を建設するのは、大手電力会社が担う。費用負担のあり方などはこれから詰めるが、電気料金に費用を上乗せする枠組みを活用するとみられる。全国の利用者が、長期間にわたって負担する可能性がある。

 広域期間は全国の電力需給や送電網などの計画をとりまとめている。政府は50年に温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする目標を掲げる。洋上風力発電を40年までに最大4500万キロワット(原発45基分)導入する方針だ。適地は北海道や東北、九州に多いが、地元だけでは電気を使い切れないため首都圏や関西圏に送れるようにする。

【出典】朝日新聞 2021年4月28日夕刊

老朽原発再稼働福井県知事が同意

 運転開始から40年を超える関西電力の老朽原発3基について、立地する福井県の杉本達治知事は28日、県庁で記者会見し、再稼働に同意すると表明した。東京電力福島第一原発事故後、原発の運転が原則40年と定められた後に全国で初めて、老朽原発が再稼働する。

 杉本知事は会見で、再稼働について「(3基の地元の)高浜町美浜町、県議会の意見と国、事業者から示された内容を確認し、総合的に勘案したうえで同意する」と話した。

 杉本知事が再稼働に同意したのは関電高浜1,2号機(高浜町)と美浜3号機(美浜町)。運転開始から44~46年を超える。

 再稼働には地元首長、議会の同意が必要とされる。3基については高浜、美浜両町が2月までに同意し、福井県議会が4月23日に容認。知事の判断が焦点になっていた。

 関電は5月中の再稼働を目指す。3基とも福島第一原発事故の発生前後から止まっており、10年ぶりの再稼働となる。原子力規制委員会の新規制基準で設置が求められているテロ対策施設について、関電は4月22日、高浜1、2号機は期限の6月9日に完成が間に合わないと発表した。美浜3号機も設置期限が10月に迫っており、3基の再稼働は短期間にとどまる可能性が高い。

 2013年施行の改正原子炉等規制法は、原発の運転期間を原則40年と定め、規制委が認めた場合は1回に限り最長20年延長できるようになった。3基のほかに、日本原子力発電東海第二原発茨城県東海村)が規制委から認可を受けたが、再稼働のめどはたっていない。

 全国では廃炉が決まった原発を除き、計5基が5年以内に運転40年を迎える。

【技術士】過去問チャレンジ(H30建設-道路Ⅱ-2-2)

 無電柱化は重要な施策であり、近年の災害の激甚化・頻繁化、高齢者・障害者の増加、観光需要の増加等からさらに必要性が増している。中核市において無電柱化の計画・設計を担当する責任者として、下記の内容について記述せよ。
(1)無電柱化を優先整備すべき対象道路の選定の考え方
(2)より効率的に無電柱化を推進するために検討すべき事項
(3)設計・工事を円滑に進めるための、様々な着目点による取組

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【検討事項】
1.計画の立案
◇景観・観光
 ⇒景観の阻害要因となる電柱・電線をなくし、良好な景観を形成
◇安全・快適
 ⇒歩道の有効幅員を広げることで通行空間の安全性・快適性を確保
◇防災
 ⇒大規模災害(地震、竜巻、台風等)での電柱倒壊による道路の寸断を防止
3.発展キーワード
◇無電柱化の手順
(1)低コスト手法や軒下配線・裏配線を含む事業手法の選択
(2)工事時期の調整
(3)地上機器の設置場所
(4)引込設備の集約化
 ⇒地域の合意形成を円滑化するため、必要に応じ、地元関係者や道路管理者、
  地方公共団体、電線管理者による地元協議会等を設置する。
 ⇒低コスト手法である浅層埋設方式や小型ボックス活用埋設方式、直接埋設方式
  の採用によるコスト縮減を図る。
 ⇒電線管理者等が既設の地中管路等を有する場合には、これらの既存ストックの
  活用が可能か検討する。
 ⇒国及び地方公共団体は、民間の技術・ノウハウや資金を活用するとともに、
  地方公共団体の財政負担の平準化にも資する PFI 手法の採用を進める。
◇無電柱化の手法
(1)地中化方式
(2)電線共同溝方式(道路管理者が電線共同溝を整備し、電線管理者が電線、地上機器を整備する方式)
(3)自治体管路方式(管路設備を地方公共団体が整備し、残りを電線管理者が整備する方式)
(4)要請者負担方式(要請者が整備する方式)
(5)単独地中化方式(電線管理者が整備する方式)
  なお、地上機器の設置により十分な歩道幅員の確保が困難である場合には、
 地域の実情に応じて柱状型機器の活用も検討する。
◇地中化方式以外の手法
(1)軒下配線方式(建物の軒等を活用して電線類の配線を行う方式)
(2)裏配線方式(表通りの無電柱化を行うため、裏通り等へ電柱、電線等を移設する方式)

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【章立て】
 1.無電柱化を優先整備すべき対象道路の選定の考え方
 (1)幹線道路等の無電柱化
 (2)観光資源となる地域の無電柱化
 2.効率的に推進するために検討すべき事項
 3.設計・工事を円滑に進めるための着目点

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【解答案】
1.優先整備すべき対象道路の選定の考え方
(1)幹線道路等の無電柱化
 地震や強風による自然災害が発生した場合に、電柱が倒れて、交通の障害になる事象がこれまで多く発生している。災害後には、緊急車両の通行や災害対策物資の輸送などに、道路は重要な役割を果たさなければならないため、無電柱化の要求は強い。そのため、重要幹線道路や地域の基幹病院や災害対策拠点となる施設が沿線にある道路については、優先的に無電柱化を進めていく必要がある。
(2)観光資源となる地域の無電柱化
 最近では、外国人観光客の増加により、歴史的な施設が点在する観光地への観光客が増加してきている。ものが多くあるため、道路幅が狭いところが多い。そのような場所に車と人が押し寄せると、事故が発生する危険性が高くなる。また観光資源としての美観地区においては、電柱はその価値を損なうものとなることから、観光資源がある地区の無電柱化を推進する必要がある。
2.効率的に推進するために検討すべき事項
 無電柱化を行うためには、電線の地中化を計画しなければならない。しかし、道路下は多くの事業者がすでに活用しているので、使用現状の調査や今後の計画について多くの関係者へのヒアリングが必要となる。
 道路の管理についても、国や自治体だけでなく、民間事業者などの多岐にわたっている。効率的に無電柱化を推進するためには、できれば、地域の開発計画やインフラの整備計画と合わせて行るようにすることが望ましい。また、共同溝などの共同利用を図ることも効率的である。
3.設計・工事を円滑に進めるための着目点
 無電柱化を行うためには、道路や上下水道などに関係する法令が影響してくるので、計画に際しては、そういった法令や条例などの再確認が必要となる。
 配電地中化工事は、電柱による架空線の10倍程度の費用がかかるのが一般的である。その3分の1ずつを国と地方および電線を管理する民間企業が負担するので、関係者の協力が必要である。地方自治体には計画的な地域計画があり、民間でも大規模な地域開発の計画などがある場合もあるので、そういった関連情報を早期に収集して、総合的な計画とすることが重要である。また、多様な事情を抱えた地権者や地元住民が存在するので、全員の理解を得るのが難しい場合もあるため、了解を得るためには時間的な余裕も必要である。さらに、実施に当たっては、関係者が供出できる年度予算が大きく影響するので、工事費の分担を含めてどの区画をどういった工期に分けて実施するのかを調整する必要がある。

【技術士】過去問チャレンジ(H30機械-動力エネルギーⅡ-2-2)

 再生可能エネルギーの利用拡大が注目を集める中、バイオマスや風力等、数々の再生可能エネルギー発電設備の導入が検討されている。あなたは風力発電事業の検討を行る技術責任者に任命されたとして、以下の問いに答えよ。
(1)導入検討の際に調査すべき内容について述べよ。
(2)風力発電の仕組みと設備の概要について述べよ。
(3)風力発電設備導入の際に考慮しなければならない社会条件について述べよ。

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【検討事項】

1.立地計画の立案
◇風況
 ⇒年間を通じて毎秒6m以上の安定した風が吹く
 ⇒発電可能な電気容量を把握する
◇広い土地がある
 ⇒土地開発の許認可として農地転用・林地開発・農振除外等を取る
 ⇒そのために土地の権利関係・地権者、地目をチェックする
◇風車の搬入路が確保できる
 ⇒荷揚げ港から幅員5m以上の道路を確保する
◇送電線が近くにある、送電線の容量に余裕がある
◇周りの環境に影響を及ぼさない
 ⇒騒音(風切り音)のため周辺の住宅地からの距離を確保する
 ⇒希少動植物
◇自然災害(台風、雷)

2.風力発電の仕組み
◇ブレード、タワー、ナセル、増速機、発電機、ブレーキ装置、
 可変ピッチ機構、方位制御機構(ヨー制御)

3.発展キーワード
◇洋上風力発電
◇コネクト・マネージ

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【章立て】

 1.風力発電の導入検討の際に調査すべき内容
 (1)立地に関する調査
 (2)希少条件の調査
 (3)送電網の状況調査
 2.風力発電の仕組みと設備の概要
 (1)風力発電の仕組み
 (2)プロペラ形風車発電設備の概要
 3.設備導入時に考慮しなければならない社会条件

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【解答案】

1.風力発電の導入検討の際に調査すべき内容
(1)立地に関する調査
 風力発電を計画する場合には、立地条件の検討が必要である。風力発電の好適地には、一定以上の風速の風が安定して吹く場所である。それを確認するためには、最低でも1年間の風速・風光調査が必要となる。また、風車からは騒音が発生するために、周辺の住宅地からの距離を考慮しなければならない。また、風車が林立すると景観に悪影響となるため国立公園等の地域においては、景観への配慮を行う必要がある。さらに、渡り鳥などの通貨地域がある場合には、鳥類などへの影響もあるため、生物調査も必要となる。
(2)希少条件の調査
 風力発電設備は、自然災害の影響を受ける場合が多くあるため、立地を検討している場所の自然条件の調査が必要となる。特に大きな影響を与える災害として、台風など強風時の被害が挙げられる。また翼の先端は回転時に高い位置に達するため、雷害被害をうけやすい。特に日本海側の冬季雷による被害は大きいので、特に注意する必要がある。
(3)送電網の状況調査
 大規模な風力発電の場合は、都市部から離れた場所に計画されることが多いので、発電した電力を需要地まで送る送電線の容量に余裕がある必要がある。そのため、既設の送電線の状況を調査する必要がある。
2.風力発電の仕組みと設備の概要
(1)風力発電の仕組み
 事業として風力発電を行う場合には、3枚翼プロペラ形風車が用いられる。プロペラ形風車の発電量は、直径の2乗、風速の3乗に比例するが、風速が一定値を超えた場合には、発電機が過負荷にならないように風車出力を制御する。
(2)プロペラ形風車発電設備の概要
 プロペラ形風車は、翼、ロータヘッド、主軸、ナセル、タワーおよび基礎から構成される。発電された電力は、既存の電力系統に連系するため、周波数調整など変電設備が設けられる。
3.設備導入時に考慮しなければならない社会条件
 風力発電設備は発電量の変動が大きいために、都市部で電力需要の多い地域の場合には、他の発電設備との協調により、総合的な安定化が図られる。しかし、そうでない地域においては、電力の変動を抑えるための蓄電設備などの併設が必要となる。また、我が国では陸上風力発電設備を計画できる場所が少ないので、海上風力発電の検討も必要となるが、我が国の周辺海峡は遠浅のところが少ないため、浮体式の発電設備の検討も必要となる。なお、地球環境問題および地政学的リスクを受けないエネルギーの活用は、今後、より活発になると考えられるので、新たな技術や仕組みの開発は欠かせないと考える。

技術士キーワード

【調査研究委員会レポート】

多端子連系をはじめとする直流送電の最新技術動向調査専門委員会

◇要素技術

 交直変換器(各種MMCなど)

 各種変電装置(ブレーキチョッパ、DC/DCコンバータ、潮流制御機器など)

 直流用開閉器、(断路器、遮断器)

 直流ケーブル

◇システム技術

 直流系統の構成(極構成、設置方式、系統トポロジー

 直流系統の保護(事故の検出方式、事故の除去方式)

 直流系統の潮流制御(マージン制御、ドループ制御、上位制御系など)

 モデル化および解析技術

 

【出典】電気学会 電力・エネルギー部門 ニュースレター(2021年3月号)

技術士第二次技術論文の書き方

1.論文を書く基本姿勢
(1)読みやすく書く
 ◇書きたいこと、書けることを書くのは自己満足でしかない
 ◇技術者ではない一般の人にも分かりやすく説明する姿勢と能力が問われる
 ◇試験委員は、自分の評価が受験者の合否に直結するという精神的負担の中で、
  短時間で多くの答案を採点する
  ⇒技術士に求められる「コンサルタント能力」
(2)論理的に示す
 ◇論理的な記述ができるためには、表面の結果だけではなく、背景まで理解して
  原因(理由)と結果をリンクさせる
 ◇論理的な思考を養うには、定点観測法で知識吸収の習慣を付け、知識データベース
  で定着させる
  ⇒すべての事項に「なぜ?」と疑問をなげかける姿勢を常に持つ
(3)畳みかけるような軽快な文章とする
 ◇一つの文章が短くする(箇条書きを用いる等)
  ⇒採点者には答案を理解しなければならない理由はなく、理解しやすい文章を書く
   義務が受験者側にあるだけ
(4)主語は何かを考えて書く
(5)肯定的な表現を使って書く
(6)「である」体を使う
(7)接続詞の達人になる

2.問題を書き出す前の思考フロー
(1)問題文を何度も読み、意図を図る
(2)問題が出題された背景を考える
(3)問題で求められれている解答ポイントを検討する
(4)関係するキーワードを洗い出す
(5)項目タイトルと答案の構成案を作る
(6)決定した項目タイトルと問題文の再確認をする
(7)論文を書きだす

洋上風力発電に適用される送電ケーブル

1.はじめに

近年、洋上風力発電再生可能エネルギーとして注目されています。洋上風力発電は、その名の通り海に風力を設置しますが、その設置形態によって着床式と浮体式に分かれます。着床式は発電用風車を海底に固定するシステムですが、浮体式は発電用風車を基礎に固定せず、洋上に設置するシステムです。前者は、比較的水深の浅い(一般的に100m未満)海域に適用されるシステムで、後者はそれより深い海域に適用されるシステムです。また、洋上で発電した電力は、陸上(需要地)に海底用送電ケーブルで送りますが、このシステムの違いは、その電力ケーブルの設計にも大きく影響します。ここでは、後者の浮体式洋上風力発電に適用する送電ケーブルについて解説します。

2.ライザケーブル(ダイナミックケーブル)

海底用送電ケーブルの歴史は古く、主に島しょ連系などで用いられてきました。それらは、海底に布設されて用いられており、運用時に動的な挙動はありません。しかしながら、浮体式洋上風力発電に用いるケーブルは、波浪による浮体式設備の動きに追従して動くことになります。海底用送電ケーブルは、送る電力量にもよりますが、100kg/mほどの重量がありますので、布設形態によっては局所的に大きな荷重がかかり、送電ケーブルを痛めてしまいます。

そのため、一般的には、海底ケーブルを浮体の動きに追従させるように、図1のような線形でケーブルを布設します。海底部と浮体間のケーブルにブイを取り付け、ケーブル中間部をS字にすることで、浮体の動きに対してケーブル荷重がある点に集中しないようにしています。この線形については、浮体式システムを設置する海域の海象条件を用いら挙動解析により、最適な設計がされています。一方では、固定されていないケーブルは浮体や波浪に追従した繰り返しの歪みを受けるため、その歪みに耐えられるような材料・構造で設計されている。このように、浮体式洋上発電システムに使う海底ケーブルは、従来の海底ケーブルと異なる設計となっており、ライザケーブル(あるいはダイナミックケーブル)と呼ばれます。

 

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図1 浮体式洋上発電のケーブル布設形態(福島洋上風力コンソーシアム)

【出典】電気学会誌Vol.141、No.1付録、用語解説第118回テーマ