【技術士】過去問チャレンジ(H30建設-道路Ⅱ-2-2)

 無電柱化は重要な施策であり、近年の災害の激甚化・頻繁化、高齢者・障害者の増加、観光需要の増加等からさらに必要性が増している。中核市において無電柱化の計画・設計を担当する責任者として、下記の内容について記述せよ。
(1)無電柱化を優先整備すべき対象道路の選定の考え方
(2)より効率的に無電柱化を推進するために検討すべき事項
(3)設計・工事を円滑に進めるための、様々な着目点による取組

 **********

【検討事項】
1.計画の立案
◇景観・観光
 ⇒景観の阻害要因となる電柱・電線をなくし、良好な景観を形成
◇安全・快適
 ⇒歩道の有効幅員を広げることで通行空間の安全性・快適性を確保
◇防災
 ⇒大規模災害(地震、竜巻、台風等)での電柱倒壊による道路の寸断を防止
3.発展キーワード
◇無電柱化の手順
(1)低コスト手法や軒下配線・裏配線を含む事業手法の選択
(2)工事時期の調整
(3)地上機器の設置場所
(4)引込設備の集約化
 ⇒地域の合意形成を円滑化するため、必要に応じ、地元関係者や道路管理者、
  地方公共団体、電線管理者による地元協議会等を設置する。
 ⇒低コスト手法である浅層埋設方式や小型ボックス活用埋設方式、直接埋設方式
  の採用によるコスト縮減を図る。
 ⇒電線管理者等が既設の地中管路等を有する場合には、これらの既存ストックの
  活用が可能か検討する。
 ⇒国及び地方公共団体は、民間の技術・ノウハウや資金を活用するとともに、
  地方公共団体の財政負担の平準化にも資する PFI 手法の採用を進める。
◇無電柱化の手法
(1)地中化方式
(2)電線共同溝方式(道路管理者が電線共同溝を整備し、電線管理者が電線、地上機器を整備する方式)
(3)自治体管路方式(管路設備を地方公共団体が整備し、残りを電線管理者が整備する方式)
(4)要請者負担方式(要請者が整備する方式)
(5)単独地中化方式(電線管理者が整備する方式)
  なお、地上機器の設置により十分な歩道幅員の確保が困難である場合には、
 地域の実情に応じて柱状型機器の活用も検討する。
◇地中化方式以外の手法
(1)軒下配線方式(建物の軒等を活用して電線類の配線を行う方式)
(2)裏配線方式(表通りの無電柱化を行うため、裏通り等へ電柱、電線等を移設する方式)

 **********

【章立て】
 1.無電柱化を優先整備すべき対象道路の選定の考え方
 (1)幹線道路等の無電柱化
 (2)観光資源となる地域の無電柱化
 2.効率的に推進するために検討すべき事項
 3.設計・工事を円滑に進めるための着目点

 **********

【解答案】
1.優先整備すべき対象道路の選定の考え方
(1)幹線道路等の無電柱化
 地震や強風による自然災害が発生した場合に、電柱が倒れて、交通の障害になる事象がこれまで多く発生している。災害後には、緊急車両の通行や災害対策物資の輸送などに、道路は重要な役割を果たさなければならないため、無電柱化の要求は強い。そのため、重要幹線道路や地域の基幹病院や災害対策拠点となる施設が沿線にある道路については、優先的に無電柱化を進めていく必要がある。
(2)観光資源となる地域の無電柱化
 最近では、外国人観光客の増加により、歴史的な施設が点在する観光地への観光客が増加してきている。ものが多くあるため、道路幅が狭いところが多い。そのような場所に車と人が押し寄せると、事故が発生する危険性が高くなる。また観光資源としての美観地区においては、電柱はその価値を損なうものとなることから、観光資源がある地区の無電柱化を推進する必要がある。
2.効率的に推進するために検討すべき事項
 無電柱化を行うためには、電線の地中化を計画しなければならない。しかし、道路下は多くの事業者がすでに活用しているので、使用現状の調査や今後の計画について多くの関係者へのヒアリングが必要となる。
 道路の管理についても、国や自治体だけでなく、民間事業者などの多岐にわたっている。効率的に無電柱化を推進するためには、できれば、地域の開発計画やインフラの整備計画と合わせて行るようにすることが望ましい。また、共同溝などの共同利用を図ることも効率的である。
3.設計・工事を円滑に進めるための着目点
 無電柱化を行うためには、道路や上下水道などに関係する法令が影響してくるので、計画に際しては、そういった法令や条例などの再確認が必要となる。
 配電地中化工事は、電柱による架空線の10倍程度の費用がかかるのが一般的である。その3分の1ずつを国と地方および電線を管理する民間企業が負担するので、関係者の協力が必要である。地方自治体には計画的な地域計画があり、民間でも大規模な地域開発の計画などがある場合もあるので、そういった関連情報を早期に収集して、総合的な計画とすることが重要である。また、多様な事情を抱えた地権者や地元住民が存在するので、全員の理解を得るのが難しい場合もあるため、了解を得るためには時間的な余裕も必要である。さらに、実施に当たっては、関係者が供出できる年度予算が大きく影響するので、工事費の分担を含めてどの区画をどういった工期に分けて実施するのかを調整する必要がある。