洋上風力発電に適用される送電ケーブル

1.はじめに

近年、洋上風力発電再生可能エネルギーとして注目されています。洋上風力発電は、その名の通り海に風力を設置しますが、その設置形態によって着床式と浮体式に分かれます。着床式は発電用風車を海底に固定するシステムですが、浮体式は発電用風車を基礎に固定せず、洋上に設置するシステムです。前者は、比較的水深の浅い(一般的に100m未満)海域に適用されるシステムで、後者はそれより深い海域に適用されるシステムです。また、洋上で発電した電力は、陸上(需要地)に海底用送電ケーブルで送りますが、このシステムの違いは、その電力ケーブルの設計にも大きく影響します。ここでは、後者の浮体式洋上風力発電に適用する送電ケーブルについて解説します。

2.ライザケーブル(ダイナミックケーブル)

海底用送電ケーブルの歴史は古く、主に島しょ連系などで用いられてきました。それらは、海底に布設されて用いられており、運用時に動的な挙動はありません。しかしながら、浮体式洋上風力発電に用いるケーブルは、波浪による浮体式設備の動きに追従して動くことになります。海底用送電ケーブルは、送る電力量にもよりますが、100kg/mほどの重量がありますので、布設形態によっては局所的に大きな荷重がかかり、送電ケーブルを痛めてしまいます。

そのため、一般的には、海底ケーブルを浮体の動きに追従させるように、図1のような線形でケーブルを布設します。海底部と浮体間のケーブルにブイを取り付け、ケーブル中間部をS字にすることで、浮体の動きに対してケーブル荷重がある点に集中しないようにしています。この線形については、浮体式システムを設置する海域の海象条件を用いら挙動解析により、最適な設計がされています。一方では、固定されていないケーブルは浮体や波浪に追従した繰り返しの歪みを受けるため、その歪みに耐えられるような材料・構造で設計されている。このように、浮体式洋上発電システムに使う海底ケーブルは、従来の海底ケーブルと異なる設計となっており、ライザケーブル(あるいはダイナミックケーブル)と呼ばれます。

 

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図1 浮体式洋上発電のケーブル布設形態(福島洋上風力コンソーシアム)

【出典】電気学会誌Vol.141、No.1付録、用語解説第118回テーマ