デジタルツイン

1.はじめに

デジタルツインとは、現実世界の対象物と対になる双子(ツイン)をサイバー空間上に構築し、モニタリングやシミュレーション等に用いる技術であり、IoT(Internet of Things)技術の成長に伴って、航空業界や製造業における保守や設計等への活用を中心に発展してきた。近年では、電力系統分野においても、電力系統の運用の効率化や高度化等の観点からデジタルツインの活用が期待されている。

2.電力系統分野におけるデジタルツイン
電力系統分野におけるデジタルツインの応用例としては、発電プラントやウィンドファーム等の単位のものから、電力系統全体や系統運用を対象としたものまでいくつかの事例が存在する。

電力系統分野では、国外を中心にデジタルツインの検討が進んでおり、発電プラントやウィンドファームに関しては、出力の予測や異常検知、運用効率化等を目的としたデジタルツインの実用化が進んでいる。これに対して、電力系統全体を対象としたデジタルツインに関しては、系統全体のモデルの同期化・標準化を目的としたもの、オンライン分析の高度化を目的としたもの等、いくつかの観点で検討が進められている。

国内においても、系統状態のリアルタイム監視や系統解析の制度の向上等を目的としたデジタルツインとしてRSDT(Real-time Smart Digital Twin)の概念が提案されており、再生可能エネルギーの導入拡大時に生じる諸課題を解決する一つの手段として、今度の実現が期待される。 

 

デジタルツインの対象 デジタルツインの機能例
発電プラント

・故障や性能低下の予測による保守の効率化

・起動および運用の最適化

ウィンドファーム

・モデルに基づく予防保全

・風力の予測、運用の最適化

電力系統全体

・電力系統全体のモデルの同期化・標準化

・電力系統のオンライン分析の高度化

・系統状態のリアルタイム監視

・系統解析の精度向上

 

【出典】電気学会誌Vol.141、No.2付録、用語解説第119回テーマ

 

AI技術によるメガソーラーの保守点検

固定価格買取制度(FIT)の導入や電気事業法の改正による保安規定の緩和など、環境配慮の観点からメガソーラーの稼働プラント数が急上昇してきた。その出力も競うように高くなり、この10年間で100メガワットを超えるプラントまで誕生している。太陽電池モジュールの枚数が多くなるほど発電量は増えるが、その数のモジュールを設置するには広大な敷地が必要となる。例えば、100メガ級のプラントの場合、太陽電池モジュールは40万枚に達し、メンテナンスにはそれだけの枚数をチェックしなければいけない。

膨大な数の太陽電池モジュールの中から発生したホットスポットを探し出すツールとして、2010年代半ばからサーモグラフィが使用され始めた。近年はドローンに搭載され、さらなる広範囲探査、およびAIによる自動解析で効率のよいトラブル源の検出が可能になった。ドローンを飛ばすには許可申請や操縦士資格の取得といった細かいルールがあるが、すべての太陽電池モジュールを上空から短時間でトレースすることができるということは、主任技術者の労力と点検時間の大幅カットにつながる。

また、広大な敷地に生育する植物を放置しておくと太陽電池モジュールに影ができ、発電量の低下だけでなくホットスポットの原因にもなるため、雑草の処理も不可欠な作業となる。ここは、AI搭載の除草ロボットが活躍するフィールドとなる。

このように、空と陸の両エリアで、AI技術の台頭による保守メンテナンスの圧倒的な効率アップが実現されている。

(632文字)

 

【出典】電気総合誌オーム2021年1月号から筆者改編

ブラックアウト

北海道胆振(いぶり)東部地震では、ブラックアウトによる経済的損失が発生した。「ブラックアウト」はなぜ発生したのだろうか。

 

平成30年9月6日3時7分、北海道胆振地方中東部においてマグニチュード6.7の地震が発生し、北海道で初めて震度7を観測した。

地震発生に伴い、厚真町の苫東厚真火力発電所(道内発電力の約4割を占める主力発電所)の発電設備は全3基中2基が地震直後に自動的に緊急停止し、残りの1基についてもボイラ管の損傷により徐々に出力が低下し、最終的に停止に至った。同発電所の停止や送電線事故に伴う水力発電所の停止等により電力供給(送電量)を需要(使用量)が大きく上回り、周波数を調整するための電源の不足等の結果、日本で初めてとなるエリア全域に及ぶ大規模停電(ブラックアウト)が発生した。道内全域において最大約295万戸が停電、ブラックアウトから概ね全域に供給できるまで45時間程度を要した。

電力は「需要」と「供給」のバランスで成り立っており、電力会社は発電量を需要者が使用する量に常時調節しながら送電を行っている。もし高周波数運転となると、発電機と軸直結されているタービン翼が共振現象により過大な応力が発生して損傷にいたるため、各発電設備には設計上の運転可能周波数の許容限度を設けられており、それを超過すると自動停止させる必要がある。そのため、最終的に電力供給不足によりブラックアウトに至った。

 

上記の経験より得られた重要な教訓の一つは、企業や病院等においては発電設備を備えておくことが事業継続の観点から重要であったということである。実際に、酸素吸入器や透析治療ができなくなった病院では、別病院に患者を搬送するなどの対応に追われた。また、水や医療用ガスが使用不可となり、外来患者の受入れを中止したところもあった。なお、道内に34ヶ所ある災害拠点病院には非常用電源があり、3日分程度の燃料備蓄が行われていたため、停電区域内でも自家発電に切り替えることで医療業務を継続することができた。

また、多くの地域で停電により信号機が稼働せず、道内の長距離トラック運送が停止し、食料や日用品、石油燃料等の必要物資が不足する事態となった。また、製造業各社で工場操業を停止するところが相次ぎ、全国生産量の約5割を占める生乳の生産(搾乳や冷却等)が滞ったことや、乳業工場の稼働停止により、全国的に牛乳が品薄の状況
となった。

 

このように、日本の社会活動全てが「電力」に大きく依存していることを国民の誰もが痛感し、災害時の電力問題を解決することが今後の大きな課題として明らかとなった。

 

【出典】防災白書 : 防災情報のページ - 内閣府

集光型太陽光発電システム

地上設置型太陽光発電システムの架台は、大きく分けると、近年よく見られる平板固定架台、東から上を向いて西に追尾する平板一軸追尾架台、そして太陽を追尾する集光二軸追尾架台の3つがある。集光二軸追尾架台は集光型太陽光発電システムとも呼ばれる。

集光型太陽光発電システムは、主にレンズを利用し、太陽の光を数倍から数百倍に集光して太陽電池で発電する。数百倍の集光であれば太陽電池の大きさも数百分の一でよいため、多接合型(注1)のような高価な太陽電池も利用可能である。平面型の太陽電池では直達光と散乱光の両方で発電するが、レンズは一般的に一方向からの光を集めるため、集光型太陽光発電システムでは直達光のみを利用して集光する。よって、直接太陽の見えない曇りの日はほとんど発電できないが、晴れの日は朝から出力が大きく立ち上がり、一日を通して出力は高く、平板固定架台と比べてより多く発電することが出来る。

集光による温度上昇や電流増加のため効率が下がる要素もあるが、光強度が上がると開放電圧(注2)は対数的に増加するため、一般的には発電効率は向上する。

(注1)アモルファスシリコンと薄膜多結晶シリコンなど、異なる太陽電池を重ね合わせてタンデム構造にしたもの

(注2)太陽電池の出力端に負荷をつながず、電流を流さない状態で測定した電圧のこと

 

【出典】電気学会誌Vol.104、No.4付録、用語解説第109回テーマ

バーチャルパワープラント(VPP)

需要家側エネルギーリソース、電力系統に直接接続されている発電設備、蓄電設備の保有者もしくは第三者がそのエネルギーリソースを制御(需要家側エネルギーリソースからの逆潮流を含む)をすることで、発電所と同等の機能を提供する。その仕組みは、あたかも一つの発電所のように機能することから、「仮想発電所:バーチャルパワープラント(VPP)」と呼ばれている。

逆潮流とは、自家発電を所有する需要家が、消費電気よりも発電電力が多くなった場合に、余った電力を電力会社線側に戻るように流すことである。また、需要家とエネルギーリソースが同じ場所にない場合は、特設電力会社に流すこともある。

電気は「貯蔵できない」という性質を持つため、常に需要と供給をバランスさせる必要がある。そのため、需要に合わせて供給することや、瞬時瞬時の需要の変化に対応することが重要である。このような需給バランスを保つ役割は、これまで主に大型の発電機の稼働によって担われてきたが、ここに、分散側エネルギーリソースを用いたVPPなどを活用することが期待される。

 

【出典】電気学会誌Vol.104、No.3付録、用語解説第108回テーマ

エンジニアとしての過去、現在、そして未来へ

現在、技術士(電気電子部門)と電験一種の勉強中です。

振り返りのため、これまでの経緯を記録として保存しておくことにします。こう見ると、仕事の合間と言いながら時間かかりすぎの感が強いなあ。

電験三種

  理論 電力 機械 法規
平成22年度 不合格 合格 合格 不合格
平成23年 合格 ** ** 不合格
平成24年 ** ** ** 不合格
平成25年度 ** 不合格 合格 不合格

電験二種

  理論 電力 機械 法規 二次
平成24年 合格 不合格 合格 不合格
平成25年度 ** 合格 ** 合格 未受験
平成26年 ** ** ** ** 不合格
平成27年 合格 合格 合格 合格 不合格
平成28年 ** ** ** ** 合格

エネルギー管理士

  課目Ⅰ 課目Ⅱ 課目Ⅲ 課目Ⅳ
平成28年 合格 不合格 合格 合格
平成29年度 ** 合格 ** **

電験一種

  理論 電力 機械 法規 二次
平成30年度 合格 不合格 不合格 不合格

**:試験免除

平成29年度技術士第一次試験合格証

平成29年度技術士第一次試験に合格証が、成績通知書と共に届きました。

 

結果は以下の通りで、合格基準50%をギリギリ通過した感じですが、第一次試験は第二次試験への通過点でしかないので、これはこれで割り切って次へ進みます。

 

成績及び結果

 科目

(配点)

適正科目

(15点)

専門科目

(50点)

基礎科目

(15点)

成績 11 28 11
結果 合 格