【技術士】技術士第一次試験・第二次試験合格のポイントー受験対策のポイントと対策講座ガイダンスー

2017年12月9日(土)、(株)新技術開発センターの首記講座(参加費は資料代の1000円のみ)に参加しました。

40〜50代の中堅以上の方がほとんどで、約60名と教室一杯で盛況でした。

第1部は技術士の方から「技術士試験とは」について圧倒されるほどの熱気のある講義、第2部はセンターの事務局からの講座紹介、第3部は今年度の合格者の体験記でした。

 

「なぜ、あなたは技術士の資格が必要なのですか?」

「なぜ、国は技術士を国家資格として定めていると思いますか?」

あなたのスキルアップ?技術力の向上?信用を得る?人脈を作る?はいずれも口頭試験で「不合格」です。

技術士は、日常業務を通じて「科学技術の向上と国民経済の発展」(技術士法第1条)に対して成果を出すことが求められます。つまり、直面している課題(人口減少による国際競争力低下、異常気象による災害対策など)に対して「高等の専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、試験、評価又はこれらに関する指導」(技術士法第2条)を行い、創意工夫で問題解決に当たるのが技術士の責務です。

技術士試験とは、すでに上記の能力を有しており、指導業務を過去にやってきたことを試験官にアピールするものです。つまり、技術士に相応しい能力と実績を示し、技術士として相応しいことを証明しなければなりません。

上記について、多くの方が誤解しています。

「今日から毎日勉強してください。しない方は不合格です。自分は絶対合格するゾ!と宣言してください。」

朝日新聞5月9日「九電、再生エネ事業者に送電停止要請 種子島で全国初」

【出典】朝日新聞 2015年5月9日版

エネルギー政策議論や原子力発電是非の裏で、足元で起こっている今が垣間見える記事です。

 太陽光発電システムを施工・販売するサニックス(福岡市)は7日、全社員の16%にあたる600人規模の希望退職を募集すると発表した。営業所の統廃合も進める。再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度が見直され、経営環境が急速に悪化しているのに伴う措置。急拡大してきた主力の太陽光事業が、大幅な合理化を迫られている。

 希望退職は、太陽光事業を手がける主力部門を対象に14日から29日まで募る。退職日は6月22日。退職に応じる社員には割り増し退職金を支給し、2016年3月期に特別損失約3億円を計上する見込みだ。

 太陽光事業の営業所も大幅に削減する。九州地区で24カ所中11カ所を廃止するのをはじめ、中国・四国・関西の各地区でも3カ所を廃止し、6月中に近隣の営業所に統合する予定。西日本の営業所は65カ所から45カ所に減る。関東などの営業所は、まだ成長が見込めるとみて維持するという。

 

朝日新聞5月9日「九電、再生エネ事業者に送電停止要請 種子島で全国初」

【出典】朝日新聞 2015年5月9日版

再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)の実情が露呈する記事です。

 九州電力は7日、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)に基づく電力の買い取りをめぐり、鹿児島県種子島太陽光発電事業者に対して送電を止めるよう要請したと発表した。太陽光など再生エネの発電設備が増えて島内の電力需要を上回る恐れがあるためとしている。FITで電力を買い取っている大手電力会社が、発電事業者に送電停止を求めたのは全国で初めて。

 九電によると、500キロワット以上の発電設備をもつ島内の事業者8社のうち1社に対して4日に出力制御を指示し、5日午前9時から午後4時まで発電を停止させた。種子島は九州本土と送電網で結ばれておらず、好天で太陽光の発電量が増えて電力の需給バランスが崩れると、停電が起きる可能性があるという。

 FITをめぐっては、電力の買い取り条件を厳しくした新ルールが1月に施行されたが、今回は補償なしで年間30日まで出力抑制を求められる旧ルールに基づいて九電が停止を求めた。今後も天候や需要予測をもとに、8社に順番に送電を止めてもらう計画だ。事業者はその分、売電収入が減ることになる。

 九電は先月28日、天候次第で種子島の発電事業者に送電停止を求める、と発表していた。他の離島でも太陽光発電設備の建設が増えており、送電停止の対象地域が広がる可能性がある。

2015年3月30日朝日新聞「「問い続ける」宝塚線事故裁判(下)」

JR西日本のHPで公開されている安全考動計画2017では、これまでの「安全基本計画」を踏まえ、「安全・安定輸送を実現するための弛まぬ努力」「リスクアセスメントのレベルアップ」「安全意識の向上と人命最優先の考動」「安全投資」に重点的に取り組み、具体的数値目標の達成をめざす、となっています。

これからも、「安全」とは絶えず努力して「安全」の状態を保とうとするものであるが、永久に「絶対安全」にはたどり着けない「いばらの道」であることが垣間見えます。

「危ない時は止める」教訓生かす

異例の対応だった。

近づく台風に備え、JR西日本は昨年10月12日、近畿6府県の在来線のほぼ全線で翌13日夕からの運転をほぼ取りやめることを決めた。

翌13日。京阪神地区の在来線24線区を走る全列車・計約1200本が方針通り運休となった。この日は祝日にあたり、いつもならJR大阪駅は親子連れや観光客で込み合う夕刻。だが、立ち入りを禁じる柵が設けられ、人影は消えた。

「『危ない時は止める』と考えることができる流れになった。宝塚線事故の教訓です」。JR西の幹部は振り返る。市民団体が実施したアンケートでも、近畿圏に住む人たちの7割が対応を評価した。

安全より、利益を優先してきた会社―。10年前の脱線当時、そうした批判を受けた会社とは異なる姿があった。


強制起訴された歴代社長3人の裁判では、JR西の安全のあり方をめぐる証言や資料が明るみに出た。

「事故が起これば、責任は厳しく追及する」。1992年10月に本社で開かれた総合安全対策委員会の議事録には、社長だった井手正敬・元会長(79)の発言が記されていた。遺族らには「事故を安全対策に生かすという姿勢が欠けていたことの表れではないか」と受け止める人もいた。

27日の大阪高裁判決も一審と同様に無罪だった。検察官役の指定弁護士を務める河瀬真弁護士(44)は言う。「経営効率を高めるため、安全対策をおざなりにしてきたJR西日本の姿をある程度明らかにできたと思いたい」

事故後の捜査と裁判の進展に歩調を合わせるかのように、JR西は安全対策への投資を拡大。10年間で9323億円を投じた。現場カーブにつけていれば事故は防げたとされる自動列車停止装置(ATS)も、2012年までに京阪神の路線のほぼ全域を網羅した。


リスクアセスメント。危険性(リスク)の芽を未然に摘むため、JR西が取り組む安全対策だ。歴代社長3人の一審の公判で元運転士は「事故が起きた急カーブは危ないと感じていた」と証言した。たが、SOSは社内で共有されなかった。理由について元運転士は「ATSをつけてもらわないとだめだと思ったが、個人の意見を言うと(自分に)不利益になると思った」と語った。

リスクアセスメントのもとで毎年3万件前後の報告が寄せられ、13年度までにホームと列車の段差をなくしたり、標識を見やすい位置に置き換えたりするなど1500件以上の対策がとれらた。

それでも、事故はなくならない。先月には岡山県倉敷市内の山陽線の踏切で電車とトラックが衝突し、18人が負傷した。踏切の異常を知らせる発光機は点滅していたが、運転士の非常ブレーキ操作が遅れていた。

「(問題を)100%洗い出せてはいない」と真鍋精志社長(61)は認める。

死者107人、負傷者562人、未曽有の大事故の教訓を生かす取り組みに、終わりはない。

朝日新聞10月25日「耕論 再生エネルギーの針路」

【出典】朝日新聞 2014年10月25日版

先日、9月24日に九州電力が、30日に北海道電力東北電力四国電力が、再生可能エネルギー発電設備の接続申込みに対する回答をしばらく保留することを公表した。また、同30日に沖縄電力が、再生可能エネルギー発電設備の接続申込みの接続可能量の上限に達したと公表した。

中断の理由については、いずれの電力会社も、計画中の太陽光発電事業をすべて受け入れると管内の電力需要を上回り、電力供給が不安定になることで停電などのトラブルを引き起こす可能性があるため、としているが、その説明は決して正しとは言えない。欧州でそのようなトラブルが起きているとは聞かないし、電力の調達コスト高騰で電気料金値上げに跳ね返ってくることを暗に警戒しているだけだと思うが、制度上の問題もそれに拍車をかけている。

朝日新聞に専門家の意見が掲載されていたので転記した。特に真新しい議論はないが、未来のライフスタイルを見据えた制度設計をお願いしたい。

太陽光、風力、地熱など再生可能エネルギーでつくった電気を電力会社が買い取る制度を「FIT」と呼ぶ。再生エネの導入を狙って2年前に始まったが、電力5社が新規の買い取りを中断した。専門家はこの事態をどう考えるか。

 ■最大限導入と安定、両立の道を 安田陽さん(関西大学准教授)

 固定価格買い取り制度(FIT)による新たな申し込みへの回答を保留した電力会社のいくつかは、国から認定を受けた設備がすべて稼働すれば、電力需要を超えると説明しています。

 再生エネを電力系統(送電網)に大量に受け入れると停電をもたらしかねないという意見もある。2006年の欧州大停電がよく引き合いに出されますが、その原因は送電会社の単純なミスでした。風力が停電拡大に一部拍車をかけた面はありますが、技術的問題ではなく、ルールの統一と義務化が遅れたためでした。

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 <カギは技術革新> 欧州や北米は、再生エネのために電力の安定供給を犠牲にしているわけではありません。安定供給を保ちながら再生エネを最大限導入するために絶えず挑戦し、技術革新を続けています。二つを両立できないというのは、「日本には技術力がない」と世界にアピールするようなものです。

 現在の状況をFITの欠陥のように言う意見もありますが、FITは再生エネを爆発的に入れるための制度で、導入した国では5~10年で10倍以上に増えています。日本は2年間で2倍。決して多くはなく、問題は一部の地域や太陽光に偏っていることです。

 発電コストの高い太陽光だけが増えているのは、世界的には異例です。洋上風力や蓄電池もそうですが、日本では高い設備がもてはやされる。その分負担が大きくなるという説明が、きちんと国民にされているとは思えません。コストの安い陸上風力や地熱などが入らないのは本末転倒です。

 いまの状況を打開するのに即効性があり、最も安上がりなのは太陽光の出力抑制です。太陽が照りすぎて需要を超えそうになった時に、少し発電を抑える。このような時間帯は、工夫すれば年間の数百時間で済み、全体として数%以下に抑えられます。スペインやポルトガルでは、一定規模以上の発電所に双方向の通信設備が義務づけられているので、送電会社からオンラインで出力抑制が可能です。日本も義務づけるべきです。

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 <送電増強議論を> 次に各電力会社を結ぶ連系線(送電線)の利用拡大です。九州と中国間は結構使っていますが、北海道と東北間、東北と東京間には相当の空き容量がある。再生エネに不利なルールを変え、会社間の電力のやり取りを柔軟にすれば、より多く入れられます。

 2013年の日本の太陽光と風力の発電量は、全体の1・5%しかありません。「欧州は送電網が張り巡らされている」と言う人がいますが、他国との連系線が細いスペインや島国のアイルランドでも太陽光と風力の比率は、日本の10倍以上です。大きなお金をかけなくても太陽光や風力は送電網に10~20%受け入れられるというのが、欧米の送電線専門家の見方です。

 太陽光や風力を発電量の20%以上にするには送電線の増強が必要で、数兆円のコストがかかります。ただ、このコストは投資と見るべきで、化石燃料の費用削減や温暖化防止、エネルギー安全保障などの便益もあります。欧州では10年前からやっていることですが、国が送電線の研究を主導して、国民的な議論をする必要があります。

 「2030年に総発電量の21%以上」という日本の再生エネ導入目標は、たとえ達成したとしても欧州の先進的な国より約20年遅れています。志が低いと言わざるを得ません。欧州では導入目標の前倒し達成や上方修正が、この10年間に繰り返されてきました。

 再生エネを送電網に受け入れられる限度を示す接続可能量という概念については、技術的な上限はないというのが欧米の電力関係者の見解です。しかも日本の電力会社の接続可能量の数値は、出力抑制や既存連系線の利用拡大などをあまり考慮しない従来のやり方で計算したものです。

 今回、電力会社だけでなく経済産業省の系統ワーキンググループが接続可能量を増やせるかどうかを検討します。それはよいことですが、保守的で志の低い数値に設定されると技術革新や制度変更への意欲がしぼんでしまう懸念があります。

 (聞き手・撮影 編集委員・石井徹)

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 やすだよう 67年生まれ。03年からシステム理工学部准教授。著書に「日本の知らない風力発電の実力」、翻訳書に「風力発電導入のための電力系統工学」など。

 ■競争原理を働かせ自立に導け 朝野賢司さん(電力中央研究所主任研究員)

 もっと安く再生エネの導入を増やす道はあります。いまの制度のままでは、コスト競争力は高まらず、再生エネは自立できない電源になってしまいます。FITは、大幅に見直すべきです。

 今回の接続保留は、太陽光の申請が増えすぎたからです。太陽光パネルの値段は世界で同程度なのに、日本の買い取り価格は欧州の2~3倍で、高すぎます。導入コストの根拠が不透明なまま、事業者側の言い値を反映しており、国はきちんと査定できていません。

 国の制度設計の失敗で、いまの状況は「認定三重苦」と言うべき事態です。FITでは、発電事業者はまず国から事業計画の認定を受け、その後、電力会社と契約を結び、発電所の運転を始めます。いまは書類審査で比較的簡単に認定されています。

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 <制度設計の失敗> 第一の苦しみは、国の認定と運転開始との時間のズレです。国が認定した発電設備の出力は7月末までで、7221万キロワットでしたが、これまでに実際に発電を始めたのはそのうちの16%です。

 認定ばかりが増えて運転が始まらないのは、買い取り価格は認定時点が適用されるのに、買い取り期間は運転開始から始まるからです。太陽光の価格は、パネルの値下がりなどで毎年度引き下げられていますが、その引き下げ前に認定を受け、導入コストが安くなるまで運転を遅らせる悪質な事業者もいます。工事能力の限界から、運転開始が認定の数年先になる場合も多いです。ドイツでは運転開始時の価格が適用されています。

 第二は、発電コストが安い再生エネが広がっていないことです。国が認定した再生エネの96%が太陽光。1キロワット時あたりの買い取り価格は、事業用の太陽光が32円に対し、風力は22円、大規模な地熱は26円です。割安な風力には環境アセスメントなど手間がかかり、地熱は温泉事業者への配慮が欠かせない。割高ではあるがこうした制限がない太陽光ばかりが増えてしまいました。

 第三は著しい地域偏在です。九州では、国の認定した事業計画の発電能力が、電気の使用が少ない時期の昼間の最少需要の2倍を超えてしまっています。送電網の容量を考慮することなく国が認定を出したためで、接続を保留せざるをえない事態にあります。

 「認定三重苦」によるコストの負担者は電気を利用する国民です。認定した事業計画がすべて運転を始めると、発電電力ベースで再生エネは10・7%から19・8%に増えますが、利用者が負担する賦課金の累計額は約50兆円。一般家庭の年間負担額は、いまの4倍の1万1220円になります。

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 <入札制の検討を> もっと効率的な再生エネの導入が本当はできます。日本は、導入が進んだ欧州を参考にしますが、FITについては反省点も多い。ドイツ、フランス、英国、スペイン、いずれの国も太陽光が入りすぎないように買い取り量に上限を設けています。最近は市場をゆがめないために、入札制度など競争原理を取り入れるのが主流です。

 日本も、入札制度に切り替えるべきです。中長期の再生エネの導入量の目標を定め、必要な量で募集し、安く発電できる業者の事業から順々に認定していく制度です。たとえば、「太陽光は年間200万キロワットまで」とするなど、電源や年度別に目標を設定するのもありでしょう。

 一方、電力会社間の電力融通も技術的課題です。余った再生エネを隣の会社に送電することは、実証実験中です。今後、変動の大きい再生エネを優先するべきかなどが論点になるでしょう。また、送電網など系統増強費用は、7兆~21兆円との試算もあります。負担が過大となれば、再生エネへの国民の期待もしぼみかねません。

 環境に優しい再生エネは石炭や原子力と比べいまは割高です。自立した電源に育つまで、みんなで賦課金を出して買い支えるのが、FITの本来の目的のはずです。

 今回の事態は、「最大限導入」のかけ声のもと、無理をしすぎた結果ではないでしょうか。少ない費用で多く入れるという競争原理を少しでも働かせるための契機とするべきです。そのことが、再生エネの自立にもつながります。

 (聞き手・撮影 西尾邦明)

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 あさのけんじ 74年生まれ。博士(地球環境学)。専門は再生可能エネルギー環境経済学。著書に「再生可能エネルギー政策論 買取制度の落とし穴」など。

原発を考える(その5)~東電常務の発言は無責任

【出典】朝日新聞 2014年3月29日版

http://www.asahi.com/opinion/?iref=com_gnavi

東電常務の発言を「原発事故の核心を正面から直視し、自分の言葉で率直に語っている」と評価するのには違和感を覚えた。当事者、それも技術部門のトップがそう言う物言いをするのは無責任であり怒りさえ覚える。彼の本心はどこにあるのか。

過酷事故に対処できなかった要因の一つが「法律」であるはずもない。それは、単に裁判対策の方便だ。「人間とは易きに流れやすいもの」とするなら原子力を扱う資格はない。今後何十年にもわたる放射能との戦いに対峙するのは、誰でもないあなたなんですよ。本当に、あなたは原子力発電を続ける資格がありますか?

我々に原子力発電を続ける資格があるのだろうか―。東京電力常務で原子力技術者のトップ、姉川尚史さんはこの3年間、そう自問し続けてきたという。昨年8月に東京工業大学で開かれたシンポジウムで福島第一原発のかつての津波想定の甘さについて「恥ずかしい」と述べ、「謙虚さが足りなかった」とも語った。その真意を聞いた。

― 東工大でのシンポで福島第一原発の過去の津波想定の甘さを批判しました。

今年の東京都心の大雪を『有史以来の最大の大雪』と私が言ったら誰もがそれは言い過ぎではないかと疑いますよね。数年前の津波がこれまで起こった最大の津波と言うのも、今考えるとあまりに甘い見方です。一方で、それがよく審査を通ったな、とも思います。今から思えば、顔が真っ赤になってしまうほど恥ずかしい、そういった反省の気持ちをお伝えしたかったんです。

― 「法律」のせいで安全対策を見送る方向に誘導されたという話もありました。でも、法律で電力会社に義務づけられているのは、守るべき最低限の基準です。それに上乗せする自主的な安全対策は電力会社の責任でいくらでもやれます。

自主的にやるべきじゃないかというのはその通りで、おおいに反省すべきだと思っています。でも、我々にも苦しみはあったわけです。何かをしようとすると、『この間の話と違うじゃないか』と言われる。そういうことに慣らされると、それを強い気持ちで乗り越えられる人間はそんなにたくさんはいなくて、易(やす)きに流れてしまう。新しいことをやるのに臆病になる。私もそういう空気を感じたことがありました。

   ■     ■

― 福島第一の事故について「史上まれにみる巨大な地震津波に起因する」と結論づけた社内調査報告書もシンポで厳しく批判しました。

この報告書は『この事故はだれがやっても防げなかった』というスタンスで書かれている。これは原子力のプロの姿としては不十分です。 安全にこれで良いというゴールはないんです。サッカー選手にしても、ボクシング選手にしても、その道の一流のプロはみんな無限精進をしているわけです。原子力に巨大リスクがある以上、当然、我々もそうするべきです。

― 現旧の役員らが被告となっている株主代表訴訟の法廷では東電は今も「今回のような大きな津波がくるとは想定できなかった」と主張しています。姉川さんの言葉と矛盾しているのではないですか。

犯罪だとか、注意義務違反だとか、白黒つけられるかというと、それはそうではないと思います。津波に対して何もせずにぼんやりしていたかというと、そうではなく、心配もしていましたし、いろいろ対策を議論していました。残念ながらシュートを決められる決定力はありませんでしたが。 とはいえ、プロとしては、負けて帰ってくるのは恥ずかしい。原子力のプロとしては『あの事故は仕方なかったんだ』とは言いたくない。『防げなくても仕方なかった』とは私は思っていません。

― 具体的に何ができましたか。

一つだけ選べと言われれば、私は、バッテリーの止水を選びます。 ― 姉川さん個人として、原子力は続けるべきだと考えますか? 続けるべきだと思います。日本は決して豊かな天然資源があるわけではないし、だからこそ、オイルショック(73年)前後から原子力を一生懸命やってきました。今はこれに代わるものがないと思っています。

― 原発が稼働していなくても、石油や石炭天然ガスなどで日常的な生活は維持されています。

それは今までの日本の経済的な蓄えがそれを可能にしているだけであって、長く続くものではないと思います。

    ■     ■

― 事故から3年たちます。そもそも原子力を人間の手で制御できるのかという疑問が残ったままです。

3年たっても14万人の方が避難を続けていて元の生活に戻れない、あの事故を起こした責任の重さを痛切に感じています。

この3年の間、自分たちは原子力発電というのを続けてよいのだろうか、続ける資格があるのだろうか、そういうことを思い悩む期間でした。もし事故が回避できないことなのなら、さすがに続けられないと思います。ただ、福島第一の事故に至るまでの背景をいろいろ調べて、ひもといていくと、自分たちに足りなかったことがあった。まだまだたくさんのことをやれたと確信できました。ということは逆に、人の英知でこのエネルギーをコントロールできる可能性がある。その可能性にかけたいです。

― 続ける資格がありますか?

私は、まだ足りない、まだ道半ばだと思っています。防潮堤などハードウエアはお金をかければできあがります。でも、自然現象が原子力のリスクにどういうふうに影響するのかを見極めて迅速な対策をしていく精神、心がけ、行動パターン、安全文化……それらを作り上げ、原子力だけで3千人近く、会社全体では4万人近くの気持ちを一つにしていくのに時間がかかります。自分たちはまだ改革の途上だと思っています。

    ■     ■

― 姉川さんの「反省」は柏崎刈羽原発の再稼働への地ならしということはありませんか。

それは随分うがった見方だと思います。福島第一の事故で最も命の危険を感じたのは東京電力の社員です。きちんと事故原因を把握し、その反省をすることなく、安全対策をいい加減にすませて運転を再開するなどというのはあり得ない。そのようなことは社員自身が拒否します。

― 昨年9月の記者会見で姉川さんは柏崎刈羽原発の安全性について「これで十分と見ているわけではありません」と言いました。十分な安全性がないと言いつつ、再稼働に向けた準備を進めるのですか。

考え得る安全対策は施してあります。しかし『これで大丈夫だ』という慢心があってはいけない、というのが福島第一の事故の大きな反省点です。そういう慢心が自分たちの心の中に忍び込まないようにしていかないといけない。それが保てないなら、『どうか運転してください』と頼まれてもお断りします。矛盾しているかもしれませんが、怖いと思う気持ちがなくなることが一番怖いことです。

我々は福島の皆さまに取り返しのつかぬような大変なご迷惑をおかけしており、本当に申し訳ないと思っています。その気持ちを一瞬たりとも忘れず、同じことを繰り返すことがないよう、安全性の追求に終わりなき無限の精進をしていきたい。

■     ■

シンポジウムでの姉川氏の発言

2013年8月3日、東京工業大学で開かれたシンポジウム「原子力は信頼を回復できるか?」での姉川尚史・東電常務の発言の主な内容は次の通り。

    ◇

原子力のエンジニアにとって、放射能が環境に大量に放出されてしまうような炉心溶融事故は、100万年に1回以下の発生頻度となるように対策を取るべきであることは常識となっている。津波を考える上でも、当然「100万年に1回の津波ってどんなものだろう」と考えるべきであった。

ところが、福島第一は1966年に設置許可を国に申請した際、60年のチリ地震津波を「最大」として設計の条件にした。

提出した方も提出した方だと思うが、よくこの申請が通ったなと今でも恥ずかしくなってしまう。当時としては、それが技術の知見の最善だったのかもしれないが、そういう想定の甘さがあって全電源喪失になったのが問題だと思っている。

70年に運転を始めた後にも、奥尻島津波(93年)、スマトラ津波(2004年)があった。神様はチャンスをくれたような気がする。勉強して改めるチャンスをくれた。いきなり3・11にならなかった。そんな気がする。

それなのに、スマトラ津波を見た後にも、福島沖の日本海溝では津波が起こらないという信念を、なぜ持ち続けることができたのか。自然現象に対する謙虚さ、原子力安全に対する謙虚さというものが足りなかったんだと思っている。

東京電力が2012年にまとめた社内事故調査報告書は、事故が起こる前の話について十分に深掘りがされていない。この報告書を読んで「この程度の反省では、再び原子力発電を行うことはできないのではないか」と考えたが、社内には同様の考えを持つ者が私のほかにも多数いた。そこで、報告書の追補版をつくろうと有志で活動を始めたところ、会社としても見直しを行うということになり、13年3月に「総括」を出した。

我々が過酷事故に対処できなかった要因の一つとして「法律」があったということも申し上げておきたい。たとえば、非常用電源を追加すると「今まで足りなかったということだから、過去の安全審査に不備があったんだ」と言われる。裁判では、設置許可の時点で不備があったかどうかで判断される。そのような状況で「我々は十全の準備をしているんだ」という説明で済ませたいという気持ちになりがちだった。

技術は常に右肩上がりで進歩し、安全対策も日々進歩するものだ。それを主張するのが難しかった。

■     ■

<取材を終えて>

姉川さんは今、生粋の原子力技術者としては東電社内で最も高い地位に就いている。その人が原発事故の核心を正面から直視し、自分の言葉で率直に語っている―。東工大でのシンポで話を聞いて、私はとても驚いた。認識すべきことを認識し、言うべきことを言える。当たり前のことなのだけど、東電にはそれがなかった。そんな過去と決別するしか、東電が生き残る道はない。その現実を、姉川さんの言葉は映している。とはいえ、原発のために苦痛を強いられている多くの人の心に、どう響くか。そこにも東電が直面する現実がある。(編集委員 奥山俊宏)







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原発を考える(その4)~エネルギー政策「原発ゼロ」からの転換

【出典】朝日新聞 2013年12月7日版

我々人類は、フクイチから何を学び、何を反省したのか。

この世に「絶対安全」はない。それなのにもう「想定外」は許されない。「安全」とは維持し続けるよう絶えず努力しなければ達成出来ない不安定な状態なのだ。それと経済効果を天秤にかけようとすると、「安全」を経済の言葉で換算する必要があるが、その係数が小さすぎる、というよりバイアスが掛かり過ぎていると思う。原発が本当に「安全」なのかどうか、我々一般市民には隠蔽され、改竄され、それでも選択しろというのは脅迫だ。政府が原発推進するなら、(嫌味な言い方だが)国民に海外移住の権利を保証してもらわないと割に合わない。

原発ゼロから転換鮮明 エネルギー計画、経産省が原案

経済産業省は6日、「エネルギー基本計画」の原案を示した。原子力発電を「重要なベース電源」として民主党政権が掲げた「原発ゼロ」からの転換を明確に打ち出した。一方で、将来の原発比率や新増設を明記することは見送った。エネルギー政策の根幹部分をあいまいにしたまま、原発の再稼働に向けた「地ならし」が着々と進んでいる。

■重要電源と明記、新増設は盛らず

基本計画はエネルギー政策の中長期的な方向を示すもので、ほぼ3年に1回見直す。総合資源エネルギー調査会基本政策分科会(会長・三村明夫新日鉄住金相談役)に原案を出した。月内に分科会案をまとめ、来年1月に閣議決定する。

原案では、原発について、エネルギーの安定供給や発電コスト、温暖化対策などの面から「重要なベース電源」とし、需要の動きにかかわらず一定の電力供給を担うものと位置づけた。「必要とされる規模を十分に見極め、その規模を確保する」と、積極的に活用する姿勢を示した。

いまは全原発が止まっているが、原子力規制委員会の審査を経て「安全性が確認された原発は再稼働を進める」ことも明記した。

原発に頼る比率は可能な限り引き下げていく考えも示したが、具体的にどこまで下げるのかの数字は示さなかった。規制委が審査中の原発14基を含め、どれだけの原発が再稼働できるか見通せないためだという。

原発の新増設や建て替え(リプレース)を認めるのかどうかも、明記を見送った。福島第一原発の汚染水問題が収束しないなか「原発推進」の姿勢を鮮明にしすぎれば、世論の批判を招きかねない事情がある。太陽光や風力など<再生可能エネルギーの「最大限の加速」も掲げたが、高コストの問題も併せて指摘し、全体として原発の「必要性」を色濃く示す内容だ。使用済み核燃料から取り出したプルトニウム核燃料サイクル」は、続ける考えを明確にした。青森県六ケ所村の再処理工場について民主党政権はあいまいな姿勢だったが、「引き続き着実に推進」と明記した。

使用済み核燃料から出る「高レベル放射性廃棄物」の最終処分地が見つからない問題は、小泉純一郎元首相が「原発即ゼロ」の最大の理由にしている。このため、自治体の立候補を待つやり方を改め、国が科学的な適地を示して選定を進める方針を盛り込んだ。

民主党政権は2010年につくった今の計画で、30年までに原発割合を約5割にするとし、東日本大震災後は「30年代の原発ゼロ」を掲げた。政権交代後の今年3月から、計画見直しを進めていた。

■代替電源の確保、戦略遅れる懸念

経産省の試算では、いまある原発が40年で運転を終えると、2028年には発電能力が現在の半分に減り、49年にはゼロになるとされる。だが、将来の比率を示さない新計画では、どれだけの代替電源が必要になるのかが分からない。

このままでは、温室効果ガスの新たな削減目標を定めることもできず、関連の政策も打ち出しづらい。電力に限れば、火力依存が続くとガス排出量は高止まりするという側面がある。電力会社なども、火力発電や再生エネルギーなどにどれだけ投資すべきか、戦略を立てるのが難しい。

分科会では、委員から「例えば原子力25%、石炭25%、天然ガス25%、その他をあわせて25%」(山名元・京都大教授)、「少なくとも15%くらいに原発依存度を減らす」(橘川武郎・一橋大大学院教授)などの意見が相次いだ。

茂木敏充経産相もこうした声を無視できず、6日の記者会見では将来の電源構成について、「最終的に責任ある需給体制をつくる」と強調。「3年以内に目標を設定し、できるだけ前倒ししたい」と述べた。

分科会の委員は政権交代で大幅に入れ替わり、明確な「原発ゼロ」は15人中2人。原発活用を進めたい政権の意向に沿った議論になるのは目に見えていた。

ただ、原発への世論の風当たりは強く、経産省幹部は「新増設を今盛り込むのは現実的でない」。まずは電力業界などが求める「原発の必要性」を強調し、再稼働が進んで世論の反発が小さくなるのを見計らったうえで、新増設などの方針をはっきりさせる。そんな思惑が透ける。