虚妄の成果主義〜日本型年功制復活のススメ/高橋伸夫
バブル後の長い停滞からなかなか抜け出せない日本企業では昨今、日本型人事システムの象徴である「年功序列」こそがその原因であるような風潮があって、一つの流行のように「成果主義」が脚光を浴びたが、実際に導入したどの企業も惨たんたる結果に終わっている。
本書は、実際には単なる切る理論である「成果主義」と対比しながら、実像としての「日本型年功制」が現場の実態や感覚からしていかに洗練されていて素晴らしいものであるかを説く。
前提として、単純な「賃金による動機付け」は科学的に根拠のない迷信であって、「望ましい動機付け」と「望ましい賃金制度」とは別次元の話なのである。日本型人事システムでは、�給料(外的報酬による動機付け)ではなく仕事を成し遂げること自身により職務満足を実現し、また次の仕事の内容で報いることで人が働くことへの内発的動機付けを引き出しており、�未来に不安なく事業の成功に専念出来るように、年功に合わせた生活保障型の賃金カーブを元に賃金制度が設計されているのである。
また、あるレベル以上に昇進するとしっかり給料に差が出る仕組みになっており、「年功だから差がつかない」という批判は誤りである。逆に、給料に見合ったパフォーマンスを求められる心理的圧迫が生まれる厳しいシステムになっている。
上記より、日本型人事システムは単なる「年功序列」ではない「日本型年功制」と呼ぶべき特色を持っており、短期思考ではなく終身雇用による「未来の重さ」を実感させるための素晴らしいシステムなのである。
【評価】
★★★☆☆
【感想】
出産のために退職して主婦になっていた妻が、最近勤めに出だしたが、派遣先では仕事がなくて「このままでは自分が腐ってしまう!」と、自身の技能を活かせる職場に転職したいと言い出した。
この身近な例からも、やはり人は「お金」でなく「働く(社会に必要とされる)」ことで自身の存在感を確認しながら、「仕事」を通じて成長していくものだと再認識した。私は大学を卒業してから今の会社に勤めて10年目になるが、妻の言葉に新鮮な響きを感じた。
退職する年になってやることがなく呆然とする仕事一筋人間だった「団塊の世代」の背中を見た人達が「会社人間にはならないように」と言ったりするが、生涯仕事人、会社人間で結構!結構!!
【お気に入り】
繰り返し言おう。経営者の仕事は、確信に満ちて揺るがぬことである。社員に見通しを与え、明るい未来を指し示すことで、アクセルロッドが示したように、敵同士でさえも協力し合う環境が熟成される。(p.224)
背任行為を「会社のため」などとうそぶくとは自己欺瞞も甚だしい。本当に会社のためを思っていたなら、会社の中での自分の地位や出世、そして周囲の目が気になっても、体を張ってでも不正を正すべきである。それこそが本当に会社の将来を考えた行動というものだろう。(p.234-235)
【目次】
はじめに
第1章 日本型年功制のどこが悪いというのか
1 成果主義の赤裸々な実像
2 日本型の「年功制」とは
3 人は金のみにて働くにあらず
4 元気に働くための要素
5 成長を選択するために
第2章 日本的経営の評価をめぐる右往左往
1 けじめはつけておかねばならない
2 いい加減に懲りるべきではないか?
3 日本型経営論の系譜を辿ってみよう
4 やがて付けが回ってくる
第3章 人が働く理由を知っていますか?
1 仕事への思いを解剖する
2 自発性は信用しうるか
3 満足と生産性の関係の二転三転
4 期待理論の登場とその限界
5 内発的動機付けの理論
第4章 未来の持つ力を引き出す
1 今何が本当に必要なのだろう
2 「見通し」が与える活力
3 終身コミットメントの意義
4 未来傾斜原理をめぐって
5 揺らぐトップが会社をダメにする
おわりに
幼稚な発想からの覚醒を
本書は、実際には単なる切る理論である「成果主義」と対比しながら、実像としての「日本型年功制」が現場の実態や感覚からしていかに洗練されていて素晴らしいものであるかを説く。
前提として、単純な「賃金による動機付け」は科学的に根拠のない迷信であって、「望ましい動機付け」と「望ましい賃金制度」とは別次元の話なのである。日本型人事システムでは、�給料(外的報酬による動機付け)ではなく仕事を成し遂げること自身により職務満足を実現し、また次の仕事の内容で報いることで人が働くことへの内発的動機付けを引き出しており、�未来に不安なく事業の成功に専念出来るように、年功に合わせた生活保障型の賃金カーブを元に賃金制度が設計されているのである。
また、あるレベル以上に昇進するとしっかり給料に差が出る仕組みになっており、「年功だから差がつかない」という批判は誤りである。逆に、給料に見合ったパフォーマンスを求められる心理的圧迫が生まれる厳しいシステムになっている。
上記より、日本型人事システムは単なる「年功序列」ではない「日本型年功制」と呼ぶべき特色を持っており、短期思考ではなく終身雇用による「未来の重さ」を実感させるための素晴らしいシステムなのである。
【評価】
★★★☆☆
【感想】
出産のために退職して主婦になっていた妻が、最近勤めに出だしたが、派遣先では仕事がなくて「このままでは自分が腐ってしまう!」と、自身の技能を活かせる職場に転職したいと言い出した。
この身近な例からも、やはり人は「お金」でなく「働く(社会に必要とされる)」ことで自身の存在感を確認しながら、「仕事」を通じて成長していくものだと再認識した。私は大学を卒業してから今の会社に勤めて10年目になるが、妻の言葉に新鮮な響きを感じた。
退職する年になってやることがなく呆然とする仕事一筋人間だった「団塊の世代」の背中を見た人達が「会社人間にはならないように」と言ったりするが、生涯仕事人、会社人間で結構!結構!!
【お気に入り】
繰り返し言おう。経営者の仕事は、確信に満ちて揺るがぬことである。社員に見通しを与え、明るい未来を指し示すことで、アクセルロッドが示したように、敵同士でさえも協力し合う環境が熟成される。(p.224)
背任行為を「会社のため」などとうそぶくとは自己欺瞞も甚だしい。本当に会社のためを思っていたなら、会社の中での自分の地位や出世、そして周囲の目が気になっても、体を張ってでも不正を正すべきである。それこそが本当に会社の将来を考えた行動というものだろう。(p.234-235)
【目次】
はじめに
第1章 日本型年功制のどこが悪いというのか
1 成果主義の赤裸々な実像
2 日本型の「年功制」とは
3 人は金のみにて働くにあらず
4 元気に働くための要素
5 成長を選択するために
第2章 日本的経営の評価をめぐる右往左往
1 けじめはつけておかねばならない
2 いい加減に懲りるべきではないか?
3 日本型経営論の系譜を辿ってみよう
4 やがて付けが回ってくる
第3章 人が働く理由を知っていますか?
1 仕事への思いを解剖する
2 自発性は信用しうるか
3 満足と生産性の関係の二転三転
4 期待理論の登場とその限界
5 内発的動機付けの理論
第4章 未来の持つ力を引き出す
1 今何が本当に必要なのだろう
2 「見通し」が与える活力
3 終身コミットメントの意義
4 未来傾斜原理をめぐって
5 揺らぐトップが会社をダメにする
おわりに
幼稚な発想からの覚醒を