ブラックアウト

北海道胆振(いぶり)東部地震では、ブラックアウトによる経済的損失が発生した。「ブラックアウト」はなぜ発生したのだろうか。

 

平成30年9月6日3時7分、北海道胆振地方中東部においてマグニチュード6.7の地震が発生し、北海道で初めて震度7を観測した。

地震発生に伴い、厚真町の苫東厚真火力発電所(道内発電力の約4割を占める主力発電所)の発電設備は全3基中2基が地震直後に自動的に緊急停止し、残りの1基についてもボイラ管の損傷により徐々に出力が低下し、最終的に停止に至った。同発電所の停止や送電線事故に伴う水力発電所の停止等により電力供給(送電量)を需要(使用量)が大きく上回り、周波数を調整するための電源の不足等の結果、日本で初めてとなるエリア全域に及ぶ大規模停電(ブラックアウト)が発生した。道内全域において最大約295万戸が停電、ブラックアウトから概ね全域に供給できるまで45時間程度を要した。

電力は「需要」と「供給」のバランスで成り立っており、電力会社は発電量を需要者が使用する量に常時調節しながら送電を行っている。もし高周波数運転となると、発電機と軸直結されているタービン翼が共振現象により過大な応力が発生して損傷にいたるため、各発電設備には設計上の運転可能周波数の許容限度を設けられており、それを超過すると自動停止させる必要がある。そのため、最終的に電力供給不足によりブラックアウトに至った。

 

上記の経験より得られた重要な教訓の一つは、企業や病院等においては発電設備を備えておくことが事業継続の観点から重要であったということである。実際に、酸素吸入器や透析治療ができなくなった病院では、別病院に患者を搬送するなどの対応に追われた。また、水や医療用ガスが使用不可となり、外来患者の受入れを中止したところもあった。なお、道内に34ヶ所ある災害拠点病院には非常用電源があり、3日分程度の燃料備蓄が行われていたため、停電区域内でも自家発電に切り替えることで医療業務を継続することができた。

また、多くの地域で停電により信号機が稼働せず、道内の長距離トラック運送が停止し、食料や日用品、石油燃料等の必要物資が不足する事態となった。また、製造業各社で工場操業を停止するところが相次ぎ、全国生産量の約5割を占める生乳の生産(搾乳や冷却等)が滞ったことや、乳業工場の稼働停止により、全国的に牛乳が品薄の状況
となった。

 

このように、日本の社会活動全てが「電力」に大きく依存していることを国民の誰もが痛感し、災害時の電力問題を解決することが今後の大きな課題として明らかとなった。

 

【出典】防災白書 : 防災情報のページ - 内閣府