今更、VE(Value Engineering)と言われても…周回遅れ?

【出典】http://www.sjve.org/

リーマンショック後の激動の市場の中で、私の勤める会社(重電系)もライバル企業のコストレベルに追い付けなくなりつつある。入札に参加すれども、ことごとく逸注して受注目標を大きく下回っており、最近では利益を食いつぶして受注を取る危機的な状態が続く。ただし、社内は今日の飯を食うこと(目先の仕事)に手を取られて日々忙しい(負のスパイラルの入口?)。

そんな折、経営陣がコストダウンを加速させるための切り札として「VE (Value Engineering)」の資格取得を推進すると言い出した。例によって各課からもVE資格を出すようとのお達しがあり、受験条件となるVE研修を先日受けたので、そのときの所感をメモしておく。

米国GEが1947年に開発した手法であり歴史は長いが、切り口が機能本位で理解し易く、結果が「○○円コストダウン」と数値で出てくるので経営陣が飛びついたものと推測されるが、我々の企業文化に合うようにカスタマイズしていなかいと、一時の流行になるだけで、結局改善疲れでみんなやらなくなるでしょうが…。手段は何でもいいが、その手段を使い倒す、利益を絞り尽くす「しつこさ」が一番重要ですよ。

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「VE」とは?

「VE」とは、製品やサービスの価値(V: Value)を、 それが果たすべき機能(F: Function)とそのためにかけるコスト(C: Cost)との関係で把握し、 システム化された手順によって価値V=F/Cの向上をはかる手法です。日本VE協会では、以下のように定義しています。

「VEとは、最低のライフサイクル・コストで、必要な機能を確実に達成するために、製品やサービスの機能的研究に注ぐ組織的努力である」

VEの原理は単純ですが、個人の気づきとして以下の問題点を指摘しておきます(注:このように逆説的に書く方が、逆に皆様の理解が進むと思って、このスタイルとしました)。

1.原則論として、より上流である企画・開発段階(Zero Look VE)や設計段階(1st Look VE)で適用しないと大きな効果は刈り取れないはずなのに、既存の製品ベースの改善提案(2nd Look VE)レベルで安易に納得すると活動が長続きしない。

2.VEは「機能」に着目してコストで評価してしまうので、コストに表れないまたは相反する品質、安全、素材の入手のし易さ、保守のし易さ、デザイン、ブランド、問合せに対するスピーディーな対応、長期的なパートナー戦略など、価格に置き換えにくい(「機能」という日本語から発想しにくい)価値が低く評価されやすい。これにより、結局「顧客重視」から遠ざかって「企業の論理」に陥りやすい危険性を内包している。

3.価値V=F/Cの向上をはかる手法として、不確実で計測しにくい「F」を大きくするより確実で計測出来る「C」を小さくすることに目を奪われ易い。こうなると、「ネジを2つから1つにする」、「安価な材料に変更する」、「段取りや工程を1つ省略する」などに考え方が萎縮してしまい、ブレークスルーを起こしにくい。例えば、「設備増強」や「量産効果」などを安易に持ち出せば、固定資産の増加や在庫の増加により逆効果となるとこは明らか。

4.「使用者優先の原則」とは何かという最も重要な点の議論が抜けている。我々は、同じ機能なら最も安いものを常に選択するとは限らない。

5.チーム・デザインでは、日本人は兎角「ケンカせず結論を収束しよう」とするので、結果的に無難で打算的なものになり易く、常にベストな答えとならない。強力なトップダウンのリーダーシップがセットでないと、活動が空中分解する。

6.目標コストまで毎回コストダウン出来るとは限らないので貢献度が評価されにくく、社員のモチベーションの維持が難しい。