SILスタディは自分自身で、コンサルタントは期待しない

ガスタービン発電設備の保護システムにIEC61508(電気・電子・プログラマブル電子安全関連系での機能安全に関する国際規格であり、すでにJIS化も完了している)を適用し、SIL2レベルを満足すること」

これが、当時の私に与えられた命題であった。それまで「機能安全」の言葉すら知らなかった弊社の営業は、これまで標準的に採用していたメカニカルリレーを使ったハードワイヤード回路で命題をクリア出来るだろうと見込んで(思い込んで)、規格調査費を申し出しただけで受注してしまった。

規格自体、初心者には難解は部分が多く(特にJISは、翻訳版固有の読み難さやニュアンスの不明確さが目に付く)、日本国内にコンサルティング出来る企業を調査することからスタートした。

当時コンタクトした企業は、この業界で名の知れていたテュフラインランドジャパンテュフズードジャパン(当時はテュフジャパン)の2社(その後、東芝が業務提携している英国のABB Eutech社とも付き合うことになる)。

TUV」(テュフと読む。ただし、Uの上には点々がつく)とは「Technischer Uberwachungs-Verein」の頭文字であり、ドイツの行政から独立した第三者認証・検査機関を指す。テュフは元々ドイツ国内の担当地域ごとに設立された民間機関だったが、地域のしばりがなくなった後、グローバル化が進んで日本で子会社を設立している。

結局、テュフズードジャパンを選定したものの、その後に目的を達成することなく契約解消となるのだが、テュフと付き合うには下記に注意する必要があることに、気付くのが遅すぎたのだった。

・数人のドイツ人エンジニアしか認証作業が出来ず、日本の担当者は最終判断が出来ないので、情報のキャッチボールにいたずらに時間がかかる

・上記の都合、毎回ドイツ人エンジニアを呼んでの打ち合わせとなり、費用がかかるのに加えて、基本的に彼らは世界を飛び回っていてスケジュール調整が非常に困難

・彼らは製品認証の思考が高く、プラント関係のリスクアセスメントに精通していないように見受けられる

・認証までのステップ・ロードマップが不明瞭なので、レビューを受けて見ないと技術的な問題点、スケジュールなどがはっきりしない

・彼らは認証機関の立場であるので、規格要求に満足しているか否かは答えてくれるが、否の場合にどう解決すればいいかについてのアドバイスを含めたコンサルティング業務は原則出来ない(最近は、新しくサービスを始めたらしいが)

上記の理由で工程はベタ遅れとなり、お客様にペナルティーを科せられる寸前まで追い詰められていったのだった。